入場料1500円の"めぐり会える"本屋?「文喫」に、ゲイ2人がゆく。
正月早々体たらくな生活を送っていたゲイブロガーのリラコとたらればは、六本木のシェイクシャックにいた。
怠惰な人間が好むっぽい食品第一位のハンバーガーを食したあとに向かうのは、「文喫」という本屋だ。
年末年始という濁流にのまれ、だらしなくなった精神を読書によって整える……。このデトックスでなんとか真人間に戻る作戦だ。
ネットでたまたま知った入場に1,500円かかる話題の本屋「文喫」。気になっている人も多いであろうこのカフェ、一体中はどうなっているのか……?
真人間に戻りにHere we goooo♪
- 文喫とは?
- ①「文喫」の良さはずばり"めぐり会える"選書力
- ②煎茶・コーヒーが500円級
- ③席のバリエーションが幅広く居心地最高
- ④喫茶店としてのクオリティも高そう
- 感想:「文喫」は本屋の強みを最大限活かしている
- "めぐり会えた"本たち
文喫とは?
「文喫」は、都営大江戸線六本木駅をでてすぐの場所にある"入場料"を支払う本屋。
「文喫」という名前から分かる通り、蔦屋書店のように本を読みながらお茶やコーヒーが頂ける。
蔦屋書店との違いは入場に1,500円を支払うこと、煎茶・コーヒーが飲み放題なこと、レトロで寛げる内装なこと。
ぼくたちが店内に入ると、早速たくさんの本と美術館のような壁に囲まれた。
入ってすぐにぼくの好きな本、橘玲先生著「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法」が目に入る。世界の不平等を知りたい勇者におすすめの本だ。
すぐさまこの名著をみかけることになるとは「文喫」のポテンシャルが伺える……。
奥にある階段の上には入場料を支払わなければ進めなくなっている。
おしゃれで親切な店員さんにお金を払うと、バッチを渡され入場を許可された。
入場料:1,500円
(金曜日に行ったらなぜか1,980円だった)
実際に足を運んだ感想を一言でまとめてみようとすると、「読書・写真・カフェ・新しいもの好きのユートピア」(言い過ぎ?)と言ったところだろうか?
下記に良さと悪さを重要度順にまとめてみた。
これからいこうと思っている人は参考にしてほしい!
たらればが感じた「文喫」の良さ4つ
①厳選されつくした書籍に"めぐり会える"
②一杯500円レベルの煎茶・コーヒーが飲み放題
③席のバリエーションが幅広く居心地最高
④喫茶店としてのクオリティも高そう
たらればが感じた「文喫」の悪さ2つ
①トイレが足りてない
②入場できるまで待ち時間がある
①「文喫」の良さはずばり"めぐり会える"選書力
「文喫」には他の本屋を圧倒する良さを感じた。そしてそれは「本が選び抜かれている」ことにあると思った。
店内に本をおいてあるスペースはそこまで広くはないのに、棚を覗けば覗くほど読みたい本だらけだった。
全く精通していないジャンルが用意された棚をみていても、読みたくなる本が「ここ掘れワンワン」の如くたくさん湧き出てきた。
本の配置も、探しやすく、素敵にみえるように計算されつくされていた。
たらればが最初に手にとった本
入店してすぐ、猛烈に惹かれる本を発見……。
ぼくが最初に手にとった本は「My Room 天井から覗く世界のリアル 55ヵ国1200人のベッドルーム」。
著者が世界をまわり、20代の青年たちの部屋を天井から撮影し、ライフスタイルや思想をインタビューしてまとめた本だった。
インタビュイーの夢や生い立ち、彼らの国の、平均月収・人口・公用語が掲載されている。インタビュー毎にその国のリアルが1文添えられているんだけど衝撃的なものがおおかった。
例えば、
・世界4000万人いるHIV感染者のうち、その70%がサブサハラアフリカに集中していてること。
・アラブ首長国連邦は移住してきた人が多い国で原住民は10分の1程度。原住民は「エマラティ」と呼ばれ、無料で家を提供され政府の仕事を割り振られること。国全体の平均月収は36万円程度で、アメリカや日本より10万円程度高いこと。インタビュイーの青年は「ぼくたちの世代はあまり働く必要がない」と考えていたこと。
などが印象に強く残った。
生まれた国や人種が違うだけで生活する環境に圧倒的な差があった。
55ヵ国を比較することで、日本の特徴がなんとなくみえたり、ネットの発達が徐々に世界を均一化させている流れも感じたりした。
ぼくはあっという間に全てのページを読み終えた。僕のツボに入る本が入り口の無料で入れるスペースでみつかった……。
計り知れねぇ!「文喫」!
②煎茶・コーヒーが500円級
無料で煎茶・コーヒーが飲み放題!
とサイトに書いてあり、いく前から結構気になっていたポイント。
入場料を支払った人しか登れない階段をのぼると、すぐ横に喫茶のカウンターがあった。
サイトにはメニューがそんなに載っていなかったので、書いてあるメニューの多さに驚いた。
とりあえず無料の煎茶とコーヒーを頼んでみた。
どちらもアイス・ホットが選べる。ぼくが頼んだのはアイスコーヒーで、ガムシロップ・ミルクなどが受け渡し口の横で自由に入れられる。
うまい……!
想像以上にうまい。これは500円級のコーヒーの味。
「渋谷で売られているコーヒーを一通り飲んだ」と言っても過言ではないぼくが言うのだから間違いない。
大好きなカフェラテを頼もうとすると別料金で580円かかるが、ミルクとガムシロップだけでも十分うまかった。
リラコさんが頼んだ煎茶も一口頂くが、こちらも口の中に甘みと苦味がちょうどよく広がっていく。
「やすもんじゃねぇから!!! なめんな!!!!!」
と「文喫」に啖呵を切られた気がした。
加えてクオリティの高さは味だけではない。
実は今日、リラコさんはネトゲのイベントがあったそうで一睡もせずにきていた。
ぼくもぼくで朝の8時半に寝て12時頃おきたので、来る前は「今日絶対寝るね〜」と自分たちの体たらくを予言していた。
結果……
リラコさんは少し寝た。
しかし、その煎茶とコーヒーを飲んだ後はみるみる集中力が高まっていった。カフェインが強めにつくられているっぽい。
滞在すればするほど無料で美味しい茶を頂けて、あたまが冴えていき、読書を楽しめる空間になっていく永久機関ってわけだ!
③席のバリエーションが幅広く居心地最高
席のバリエーションは多種多様だった。
ファミレス席・長テーブル席・寝っ転がりながら読める席、自習席、はては研究室まで(笑)
席は入場した人数分確保されるため安心。
満員の時は帰る人が現れるまで、次の客は入り口から階段までのスペースで本を読みなが待つシステム。
もちろんテーブルにはコンセントもあり、PC作業する人もたくさん見受けられた。
④喫茶店としてのクオリティも高そう
喫茶店には想像以上のメニューがあった。
食事も普通の喫茶店ぐらいあるし、目の前のカップルも食事していたが美味しそうだった。
たらればが感じた「文喫」の悪さ2つ
「トイレが足りてない」
入場してすぐ左手に男女用トイレと女性用トイレが用意されているのだが、ぼくたちが入った16時ごろは常に列があった。
その後何回か並んでいると店員さんに話しかけられ、無料スペースにある扉の奥にビルのトイレがあるのを教わった。行く人は要チェックだ。
「待ち時間がある」
座れる席がなくならないように、満員の時は入場を制限される。
ぼくとリラコさんは整理券をもらって20分ぐらい待った。
ただ、待つといっても実際のデメリットはほとんどなく、椅子に座って本を読んで待っていられるので快適だった。
感想:「文喫」は本屋の強みを最大限活かしている
「文喫」の良さは、数多ある本の中から高い精度で名著を厳選していることだった。
ぼくは当日5時間ぐらい居て、10冊ぐらい読んだ。
もっと時間があればもっと気になる本をみつけられたと思う。
もちろん全部の本を全て読めたわけではなく、読破したのは「My Room 天井から覗く世界のリアル 55ヵ国1200人のベッドルーム」だけ。
それ以降は、とりあえず気になる本を手に取り、全体をパラパラみて、プロローグを読んで気に入ったものをメモしておいた。「購入はブックオフオンライン」作戦だ。
「文喫」は本と"めぐり会う"場所なのだ。
つまり、本と人間の合コン喫茶。
電子書籍が発達してきた今、本屋の一番のメリットは本と"めぐり会う"ことだとぼくは思う。
ネットでは自分の好みを分析され尽くしたリコメンドがされる。「あ〜これ買おうと思ってたけど、どうしよっかな?」と思っていた本が広告として目にはいってくるシステムだ。
しかし、本屋では「あ〜この話、なんとなく興味はあったけど全然知らない分野なんだよな〜よくわからないけど知りたいな〜面白そうだな〜」と思っていた少し遠くにある知識に"めぐり会える"場所だ。
「文喫」はその精度がとても高い。本屋の強みを最大限活かしている。
つまり前代未聞の本屋の入場料は、本と人間の合コンのためのアテンド料だったのだ。
本1冊分ぐらいの料金で、10冊ぐらいのかわい子ちゃんと出会えたのでぼくてきには大満足!
"めぐり会えた"本たち
①「映像制作のD.I.Y」
映像制作に興味があって読んでみた(左)。2011年出版とかの本で、ちょっとこれは古すぎた。
②「ストーリーとしての競争戦略」&「騎士団長殺し」
「ストーリーとしての競争戦略」はこれからの広告ってストーリーのあるなしが結果に結びつくよねてきなビジネス本ぽい。
「騎士団長殺し」は村上春樹読んでいる人って高尚だよねみたいなイメージがあったので読んでみたけど、下劣なぼくにはまだ早かったっぽい。
③「エロマンガ表現史」&「俺たちのBL論」
この2冊はお目にかかることのできないジャンルの本で面白すぎた。エロ漫画の歴史を辿る本と、男がBLについて語る本。
これこそ気になっていた知識。この2冊は面白すぎたのでプロローグをのせておく。
エロマンガ表現史 プロローグ
「エロマンガ」というジャンルを単なるヌキのための物語、マスターベーション・メディアと考えているならば、それは「エロマンガ」というジャンルのごく一部の面しか見ていないと言ってもいいだろう。
「GANTZ」「いぬやしき」の奥浩哉が発明した、おっぱいが激しく揺れるときに乳首が暗闇の中の車のヘッドライトのように残像する軌跡を描く「乳首残像」。男女の性行時、その挿入の様子を人体解剖図、もしくはMRI画像のように、決してリアルでは表現することができない、見えない内部を見えるように変化させて描く「断面図」。この表現が、実は江戸時代の春画の頃から描かれていたということを知る人は少ない。
俺たちのBL論 冒頭
BLを知ると世界が変わる。毎日が光り輝く。頭だけでなく心と身体で理解したとき、この世は一変する! それは、まるで「解説」を経験するかのように、一瞬にして世界が変わる稀有な体験である。ある日突然自転車に乗れるようになったら、その後乗れなくなる、ということがないように。
④「BL漫画BLシーンがたり」
BL漫画家みずから濡れ場について語っているものをはじめて拝読。「やたもも」などで知られるはらださんと、「PET契約」などで知られる座裏屋蘭丸さんが濡れ場を描く心境を語っていて面白かった。
ここで写真を載せた本以外にも、海外の写真集を6冊ぐらい読んだ。
普通の本屋さんにはないラインナップが多くとても楽しかった。
「月に1度ぐらいは本に"めぐり会い"にいくのもいいかもしれない」と、思わせてくれる「文喫」。
時代の最先端をいく本屋に、読書好きは一度でいいからいってみてほしい。